先日こんな質問をいただきました。
「集中するのって難しいですよね?どうしたら集中できますか?」
確かに集中状態を維持する事は簡単な事ではありません。
でも、集中する事自体は難しいわけではないんです。
とても簡単な事です。
それが証拠に自分に興味がある事なら、誰でも集中しているでしょ?
例えば、興味がある映画の内容は1回観ただけで覚えてしまいますよね。
これって集中して観ている証拠です。
つまり、集中する事自体はとても簡単な事です。
と言うより、特に意識しなくても集中できます。
ところが、これがテニスになるとそうではなくなる方が多いんです。
その為に、先ほどのような質問が出てくるんですね。
では、どうしてテニスだと集中できないのか?
今日はその理由についてお話したいと思います。
実はこの問題には大きな勘違いがあるんです。
と言うのはこの質問自体が勘違いなんですね。
どういう事かと言うと、集中できていない訳ではなく、別の物に集中しているだけなんです。
テニスで大切な事はテニスボールに集中することです。
ところが、多くの方は「それとは別の何か」に集中している事がほとんどなわけです。
例えば。
「相手が気になる」
「結果が気になる」
「フォームや打ち方が気になる」
「太陽や風が気になる」
これらは全て集中している対象である可能性が非常に高いです。
あえて「気になる」と言う言葉を使いましたが、まさに「気になる」は自分でも気がつかないうちに集中してしまっている対象なのです。
と言う事は「集中するのが難しい」訳ではないのがお分かりになりますか?
正確には「ボール以外の物に集中しているので、ボールに集中できていない」と言う事になります。
いかがでしょう?
「集中する事が難しい」のとは全く違いますよね。
集中できないのであれば集中する為の方法やトレーニングを実践する必要がありますが、そうではないんです。
集中する対象をコントロールする事が必要だと言うわけです。
例えば、子供たちが「ゲームをしたい」時に勉強に集中できるか?
これって基本的には難しいですよね。
ゲームが気になっている状態(つまり、ゲームに集中している)なので勉強は手につかないのが普通です。
言えば、これと全く同じです。
ボールに集中するべきなのに、「別の事が気になる」こんな状態でプレーしてしまいがちというわけです。
つまり、「集中してプレーできない」という問題は正しくは
「テニスボール以外の物に集中してしまうのでテニスボールに集中できない」と言う事になります。
ではどうしたら、テニスボールに集中できるようになるか?
この問題を解決しないといけないんですが、実はこれには答えがありません。
方法論が存在しないんですね。
あえて、言葉にすれば、「自分で自分をコントロールする事」です。
この力が必要になります。
先ほどの子供の例を考えると自分で自分を律する事ができる子は「宿題が終わってからゲームをする」と決める事ができます。
そして、宿題の期間は気になるゲームを忘れて、勉強に集中するわけです。
ですが、これって何か方法論があるわけではなく、ただ、自分が決めた事を自分で実践するだけ。
ある種のトレーニングですね。
実はテニスボールへの集中力も同じような事が言えます。
「結果が気になる」事はとても自然な事です。
ですが、それは一旦横に置いてボールに集中するように練習します。
「相手が気になる」事はとても自然な事です。
でも、やっぱりそれは一旦横に置いてボールに集中するように練習します。
「太陽や風が気になる」事はとても自然な事です。
でも、やっぱりそれは一旦横に置いてボールに集中するように練習します。
こんな練習の繰り返しです。
そうすると段々自分で自分をコントロールする事が上手になってきます。
これがボールに集中する為の唯一の方法です。
いかがでしょう?
そんな練習できそうですか?
多くの方は自分をコントロールする練習をしていない事がほとんどです。
「テニスボール以外の何か」に興味を持ちながら練習している事がほとんどなのです。
その為に、本来の能力を伸ばせないわけです。
確かに自分が気になる事を横に置くことは簡単ではないかもしれません。
ですが、それだけにそれができるようになると周りのライバル達とは全く違う次元を体験する事ができます。
ぜひ、実践してみて欲しいと思います。
次回の練習は自分が気になる物を見つけたら一旦横に置く練習をしてみてください。
きっと楽しいテニスになると思いますよ。
本日のお話は以上です。
いつも長文お読みいただいて本当にありがとうございます。
フィーリングテニス
戸村基貴
写真提供:小林一仁(zonephotography)
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