今回のテーマは「伊達公子選手の凄さ」についてお話したいと思います。
実は以前に小浦コーチに「伊達選手が他の選手と一番違う所は何か?」
を直接お聞きした事があります。
ご存知のように小浦コーチは伊達選手を世界のトップ選手にまで育てあげた名コーチです。
その小浦コーチが伊達選手をどのように見ているのか?が非常に気になったんです。
そして、実際に彼女はどうしてあのレベルまで上り詰める事ができたのか?
その大きな理由でもあると思ったからです。
さて、この質問に小浦コーチはなんて答えてくれたか?
「伊達は『わかった!』って言った瞬間から、ずっと同じ事ができるんだよ」
「例えば、スライスの練習をしている、最初は当然、イメージ通りできないからいろいろ試行錯誤する」
「そのうちに、伊達自身が「わかった!」と言う」
「こうなると後はその感覚をずっと継続してできるんだ」
「他の選手は『わかった!』と言ってもその後もできたり、できなかったりのムラがある」
「伊達にはこのムラがなかった」
「ここが彼女が他の選手と違う決定的な違い」
いかがでしょう?
小浦コーチは私の質問にこんな風に答えてくださいました。
さて、この事からあなたは何を感じますか?
上達する為に何が必要か?
ヒントを掴み取ってくださいね。
私はこのお話を聞いて、やはり「集中力が高いんだな」と思いました。
集中力と言ってもポイントが二つあります。
一つは単純に集中の持続力。
「いつも同じ事ができる=集中の持続力が長い」と言うことです。
いくら身に付いた事であっても、集中力がなくなれば、同じ結果を出すことはできなくなります。
安定して同じことを再現できると言うことは、同じような集中の高さを維持できているという事ですね。
もうひとつのポイントは感覚を身につけるまでの集中力の高さ。
一度できた事が完全に身につくまでには短期記憶⇒中期記憶⇒長期記憶の流れを踏む必要があります。
短期記憶は覚えたような気がしても、しばらくしたら忘れてしまいますよね。
例えば、一夜漬けの勉強がそうです。
次の日のテストの時には何とか覚えていても1週間もすれば忘れてしまっています。
ですが、繰り返し、記憶する事で忘れないで完全に記憶するレベルがあります。
この記憶は何年経っても忘れる事がありません。
例えば親友の名前等がそうですよね。
いくら期間が空いても忘れる事はありません。
これが長期記憶と言われるレベルです。
では、伊達さんのテクニックは?
そうなんです、長期記憶されているんですね。
ですから、ムラがなく、いつも同じ事を繰り返すことができるというわけです。
つまり、伊達選手は「短期記憶⇒中期記憶⇒長期記憶」のスパーンが非常に短い。
ところが、他の選手は「短期記憶⇒中期記憶⇒長期記憶」のスパーンが伊達選手に比べて長い。
その為に、できたり、できなかったりを繰り返しながら、だんだん完全な長期記憶として身につけて行くという事だと思います。
ここが伊達選手と他の選手の大きな違いなんだと思います。
では、どうして、伊達選手は他の選手に比べて短い時間で長期記憶化する事ができるのか?
ここでもやはり彼女の集中力の素晴らしさが発揮されている思います。
脳は集中波を発している時、スポンジのように新しい情報を吸収していきます。
ところが集中できていない時は、同じ事を繰り返してもなかなか記憶してくれません。
この差が長期記憶化するまでの時間と大きく関係しているんです。
つまり、伊達選手は他の選手より高い集中力を持っている為に短い時間で長期記憶化する事ができるというわけです。
彼女にはこの二つのポイントが備わっている事が他の選手との違いを生み出しているのでしょう。
さて、では、この話をあなたのテニスに活かすには?
そうなんです。
いつもお話しているように、やはり集中力を鍛えることが一番大切なポイントというわけです。
集中力を鍛えなければ、プレーは安定しませんし、新しい感覚を身につけることはできません。
いくら出来たような気がしても短期記憶のままでは身についたとは言えませんよね。
一生懸命練習しているのに「試合をするとやっぱりミスの連続。。」なんて事になってしまいます。
そんな事にならないように集中力を鍛える優先順位をあげてくださいね。
テクニックにばかり囚われていると集中力は磨かれません。
集中力を鍛えてこそテクニックは活きてきます。
さて、本日のお話は以上です。
何かヒントになれば幸いです。
いつも長文お読みいただいて本当にありがとうございます。
フィーリングテニス
戸村基貴
写真提供:小林一仁(zonephotography)
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