今回のテーマは「配球」
テニスは非常に知的なゲームです。
ただ、技術が優れているだけで勝てるようなスポーツではありません。
その知的さを表現する一つが配球です。
ちなみに配球に関してこんな名言があります。
「適所に打たれた当たり損じの球は、不適所に打たれたどんな見事な球よりも効果がある。」
これは往年の名プレーヤー「ビル・チルデン」が言った言葉です。
今日はこの名言がテーマです。
では、適所とはどういう場所なのか?
考えてみましょう。
テニスの適所とは?
「深い所」
「相手のいない所」
「角度のついた所」
「ネットの間際」
・・・・
こんな答えが一般的だと思います。
いわゆる、セオリーと言われる物ではこのような場所を適所と考えると思います。
確かにこれも間違いではないかもしれません。
ですが、もう少し考えてみて欲しいのです。
チルデンはあえて「当たり損じの球」と言っています。
つまり、ボールの威力は関係ないわけです。
にも関わらず、どんな見事な球より効果があると。
となると、「深いボール」や「相手のいない所」などは適所とは言い切れない事がわかると思います。
なぜなら、いわゆるセオリーと言われる場所は目的に応じたボールをコントロールされる事が前提になっているからです。
簡単に言えば、例えば、当たりそこないのボールが変に角度がつくと逆に相手のチャンスボールになってしまうと言う事です。
では、彼は一体どんな所を適所と言っているのか?
それは「相手の予想を裏切る場所」ではないかと思うのです。
または「相手の隙」です。
このような場所は、威力があるボールはもちろんの事、例え当たりそこないのボールであっても相手は反応することができません。
あなたにも経験があると思います。
自分の近くを通っているにも関わらず、「あ!」と思った時には体が止まり、ボールが通り過ぎてしまうような事が。
これがあなたの隙であり、想定していなかった場所です。
多分、チルデンはこのような相手の隙を「適所」と言っているのでしょう。
それゆえに、あえて「当たり損じ」の球を例に出しているのだと思います。
実際、このような相手の隙にボールを配球する事ができると、相手は非常に対応しにくく、試合を優位に運ぶことができます。
試合が強くなるにはこのような配球をするべきです。
それには相手を感じる感覚を磨く必要があります。
相手の殺気とでも言うのでしょうか。
相手がどこを守っているのか?これを感じるのです。
言葉で表すことは非常に難しいのですが、相手の隙を感じる練習を繰り返すとこのような物を確実に感じるようになります。
ちなみにこのような感覚はセオリーを練習しているといつまでも身につきません。
セオリーは相手が一番強固に守っている場所です。
隙とはそれとは真逆の物だからです。
ちなみに錦織選手はこの「隙を突く」のが非常に長けているプレーヤーです。
彼が今、世界のトップに位置している理由はこの感覚によるところが非常に大きいのです。
彼の配球を注意深く見ていると彼が「相手の隙を突く」感覚を見ることができます。
ちなみに見るポイントは「相手の足の動き」です。
ボールを見ないで相手の足の動きを観てください。
錦織選手のボールに対して、「相手の足が止まる」「逆を突かれる」また「足元が滑る」
このような状態になる事が度々見受けられます。
これは錦織選手の配球が相手の隙をついている事を意味しています。
その為に、相手は常にボールに遅れている感覚に陥ります。
その結果、ラリーが続いているように見えても最終的には追い込まれてポイントを失う事になるんですね。
適所への配球とはこのような配球の事を言います。
ただ、セオリー通りに配球する事は早く卒業する事が大切です。
本日のお話は以上です。
いつも長文お読みいただいて本当にありがとうございました。
フィーリングテニス
戸村基貴
写真提供:小林一仁(zonephotography)
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