送球イップスとは

イップス 野球
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今回は送球イップスついてお話ししたいと思います。
送球イップスとは突然、思うように送球できなくなってしまったイップスの事です。
イップスと一口に言っても、様々なスポーツで起こる可能性があります。
野球でもイップスで悩んでいる方が非常に多く、プロの選手でもイップスで悩んでいる方が少なくありません。
送球イップスは野球で起こりやすいイップスと言えます。

ちなみに送球イップスで悩んでしまうとほとんどの方は「正しい投げ方や正しい身体の使い方を身につける」事でイップスを克服しようと考えると思います。
ですが、実はこれが一番大きな落とし穴です。

正しい投げ方や正しい身体の使い方を練習して身につけようとすると、余計にイップスの症状が進行する事がほとんどで、多くの場合、余計に泥沼にはまって、抜け出せなくなります。
場合によっては、イップスから抜け出せなくなる可能性も少なくありません。
野球を始め、ゴルフやテニスのプロがイップスで引退を余儀なくされる場合がこのケースです。
一般の選手に比べて、正しい投げ方や身体の使い方を人一倍、知っているプロの選手ですら、この泥沼にはまってしまうのです。

実際に投げ方や身体の使い方を練習した人はお分かりだと思いますが、「どう身体を動かせば良いのか?」は頭では理解できるのです。
ですが「身体がそのように動いてくれない」または、「自分の身体がどう動いているか、分からない」
こんな状態に陥ります。
その為に、余計にイップスの症状が進行していくのです。

もちろん、投げ方や身体の使い方を練習して、イップスが治る人がいる事も事実です。
ですが、そのような方はほんの一握りです。
ですから、私は送球イップスでお悩みの方には正しい投げ方や正しい身体の使い方を練習する事をお勧めしません。

送球イップスの症状

送球イップスになってしまうと、一番多いケースが、ボールコントロールが全くできなくなります。
イップスになる前はコントロールできていた感覚が全く分からなくなって、ボールがどこに飛んで行くか、分からなくなります。
これは、ボールのコントロールが悪い、いわゆる「ノーコン」と呼ばれる物ではありません。
「ノーコン」の場合はコントロールミスをした感覚が自分でも自覚ができます。
例えば。
「指にボールが引っかかってしまって、狙いが狂った」
「腕のスイングに違和感があって、狙いが狂った」
「ボールをリリースするタイミングが悪くて、狙いが狂った」
等、とにかく、コントロールミスをした感覚が自分で自覚する事ができます。

ところが、送球イップスはそうではありません。
自分の指、手首、腕、肩などの感覚が全く分からなくなります。
また、自分のイメージや意思とは全く関係なく、腕や身体が動いてしまいます。
また、逆に固まって動かなくなる時もあります。

送球イップスは突然現れる

送球イップスに限った事ではありませんが、イップスはある時突然、現れます。
さっきまで、何ともなかったにも関わらず、次の1球から突然、おかしくなります。
私自身もテニスのサーブでイップスになった経験があるので分かるのですが、ある1球を境に全く身体が言う事を利かなくなります。
そして、一度出てしまうと、元に戻らなくなります。
また、どうして元に戻したら良いのかもわかりません。

ただ、突然、症状が現れるからと言って、その瞬間に原因があるわけではありません。
実は気が付かないうちに身体の中ではイップスの発症に近づいていたのです。
それは、花粉症の発症に少し似ているかもしれません。
花粉症は発症する時に原因があるわけではなく、花粉からの影響が積み重なり、ある時、飽和状態になると突然、症状を発症します。
実は送球イップスもこれと非常に良く似ています。
ズレた感覚のまま練習をしていると、ある時、突然、身体が思うように動かなくなり「イップスの症状が出る」と言う感じです。

送球イップスは誰もが陥る可能性がある

送球イップスは特別な人だけがなる物ではありません。
誰もが送球イップスに陥ってしまう可能性があります。
今は、まだ、何ともなくても、ある時、突然、イップスになる可能性があるのです。
理由はイップスが特別な物ではないからです。
心の病気や身体の病気ではありませんし、精神的に弱いからなるわけではないのです。
イップスになる条件を満たしてしまえば、誰もが陥ってしまいます。
その為にイップスはプロの一流選手でさえ、陥ってしまう事があるのです。
私達の身体は基本的に潜在意識によってコントロールされています。
ところが、顕在意識が潜在意識の邪魔をするような状態で練習を繰り返すと身体に誤作動が起こります。
これがイップスです。
つまり、病気でも何でもなく、誰もが、この状態に陥る可能性があるのです。

youtubeにアップされている送球イップス

一昔前に比べるとイップスで悩んでいる方が急増していますがyoutubeでもその症状を見る事ができます。

こちらは阪神タイガースのルーキー青柳晃洋選手ですが、明らかに送球イップスに陥っています。
キャッチボール程度の距離、そして、軽く送球しているだけにも関わらず、送球先が定まっていません。
中には暴投とも言えるボールもあります。
横でコーチが熱心に指導していますが、これは非常に危険です。
この状態で練習を続けるとイップスが余計に酷くなる可能性が高いです。

と言うのは本人がボールをコントロールする感覚を全く持っていません。
プロの選手になるぐらいですから、当然、以前は持っていたはずです。
ですが、今はその感覚を完全に失っています。

この状態は例えるなら、迷子になっている状態です。
迷子になっているにも関わらず、焦って、そこらじゅうを走り回っている状態と同じです。
迷いや悩みなどを含め、ネガティブなイメージが湧いたままで反復練習する事になるので、この状態で練習すると、イップスは余計に進行します。

この方も典型的な送球イップスに陥っています。
ご本人がイップスの症状やその時に感じる事をコメントされているので、とても参考になると思います。
この方はイップスに陥る前の状態も紹介されていますが、MAXで143kmのボールを投げていたにも関わらず、突然、イップスに陥ったそうです。
このようにイップスは誰もがある時を境に突然、陥る可能性があります。

野球の送球イップス

送球イップスが最も多いスポーツはやはり野球です。
ピッチャー、キャッチャー、野手に関わらず、どのポジションを守ってもイップスになる可能性はあります。
野手やキャッチャーで最も多いのがキャッチボールや選手間でのボール回しなど、緩く投げ返す事ができなくなるケースです。
遠投する時は問題が無いのに、緩く投げようとすると突然、ボールがどこに飛んで行くか、わからなくなります。
また、腕がどのように動いているかがわからなくなります。
これがきっかけになって、ボールのコントロールを全く失うケースもあります。
ちなみに、送球イップスは軽症の場合はポジションを変える事で改善される場合があります。
ただ、ポジションを変えてもイップス自体が治ったわけではないので、元のポジションで送球しようとするとやはり同じようにイップスの症状が出る場合がほとんどです。
この理由はポジションを変える事でイップスのトリガーが無くなるからです。
ですが、元のポジションに戻るとトリガーによって、イップスが出ます。
ですから、根本的な解決をするにはそのポジションでトリガーそのものを消すように練習する事が必要です。

ピッチャーの送球イップス

阪神タイガースの藤浪投手が「イップスではないか?」と心配されていますがピッチャーの送球イップスも非常に多いです。
ピッチャーのイップスで多いケースは「より速いボール」「よりキレのあるボール」を追求する為のフォーム矯正が原因になるケースです。
ピッチャーはより質の高いボールを投げる事を追求する必要がありますが、その方法を間違えるとイップスを発症します。
頭で技術を身につけようとすると危険です。
身体は潜在意識がコントロールする物です、その為に、頭ではなく、感覚を磨く事で高い技術を身につける必要があります。
ちなみに元巨人の桑田真澄氏は阪神タイガースの藤浪投手の現状を「技術不足」と言っていますが、私はイップスの可能性が高いと思います。
ただ、今は軽症で、これからの練習次第で「改善されるか」それとも「進行してしまうか」とても微妙なところです。
彼が技術不足と認識して、いろいろ考えて身体を動かし始めるととても危険です。
特に彼は死球が多いですが、この問題を投げ方で解決しようと練習したら、イップスは余計に酷くなる可能性が高くなります。
ピッチャーにとって最も大切な事は制球力です。
野球では「スピードは努力、コントロールは才能」とよく言われますが、コントロールは才能ではありません。
制球力は感覚です。
ですから、その感覚を磨けば、コントロールはいくらでも良くなります。
投手のイップスを治すには徹底して、コントロールする感覚をトレーニングする事が最も効果的です。

キャッチャーの送球イップス

キャッチャーのイップスにはピッチャーへの返球、各塁への送球などがありますが、多いケースはピッチャーへの返球から始まるケースです。

こちらは中日ウェスタンリーグ 桂捕手の動画です。
とても可哀想ですが、典型的なキャッチャーの送球イップスです。
心無いヤジが聞こえますが、もちろん、本人はいたって真面目ですし、一生懸命、コントロールしようとしています。
内心、相当辛いと思います。

ただ、幸い、桂捕手はイップスは克服されたようです。
こちらがその動画。

別人のようにボールがコントロールされています。
本当に良かったです。
このようにイップスは適切な対策をすれば、克服する事ができます。

ちなみにキャッチャーが送球イップスになる一番多いケースは盗塁を阻止する為のスローイングを練習をする時に、頭で投げ方を練習するケースです。
正しい投げ方や理想の投げ方ばかりを練習する為に、ボールをコントロールするイメージを失ってしまうのです。
その為に脳からの指令と筋肉活動に誤差が生まれ、イップスを発症します。

野手の送球イップス

野手でイップスになりやすいケースはスローイングに悩みを持つケースです。
バッターやランナーをアウトにするには素早く正確にボールを送球する必要があります。
いくら、コントロールが良くても、遅くては意味がありません。
また、いくら早くてもコントロールが乱れればアウトにする事ができません。
つまり、早く正確に送球する必要があります。
そこで必要になるのがスローイングの技術です。
この技術を身につける過程で練習方法を間違えるとイップスを発症します。

これは野手に限りませんが、大事な場面や緊張した場面での暴投がイップスになるきっかけの場合が多いです。
その為に、プレッシャーや精神面がイップスを引き起こすと考えられがちですが、そうではありません。
プレッシャーがかかった場面だからこそ、最高のパフォーマンスを発揮する人もいます。
逆にプレッシャーがかかった場面で失敗し、それがトラウマになりイップスに陥ってしまう人もいます。
この違いを「メンタルの強さの違い」と言う方がいますが、私は経験上、そのようには思いません。
高いパフォーマンスを発揮する為に必要な集中点を明確に持っているか?それとも持っていないか?
この違いが最も大きいです。

明確に集中点を持っているプレーヤーはプレッシャーがかかればかかるほど、その集中点に集中します。
その為にピンチの時ほど最高のパフォーマンスを発揮します。
ところが、集中点が分からないプレーヤーは感覚が崩れます。
その為に、ピンチでは大失敗をする可能性が高まります。
つまり、ピンチになればなるほど、集中する集中点を明確にする事でイップスは改善する事ができます。

送球イップスの原因

イップスの原因はまだ、明確に証明されていません。
その為に
「心の問題」
「身体の問題」
「精神的な弱さ」
「技術不足」
・・・・・
など、様々な考え方があります。

ですが、私の経験上ではイップスは心の病気や身体の病気ではありません。
また、精神的な弱さでもありません。
ましてや、技術不足でもありません。

私が考えるイップスの原因は脳内で描くイメージと脳からの指令にギャップが起こる事で筋肉が誤作動を起こしている事です。
つまり、簡単に言えば、脳と身体の結びつきが悪くなった結果です。

私達の身体は基本的に潜在意識がコントロールしています。
例えば、心臓は何も意識しなくても、自動的にコントロールしてくれています。
また、内臓の働きや体温の調節も同じ事です。
特に顕在意識が意識しなくても、一定の状態で維持されています。
これらは潜在意識のコントロールによるものです。

また、赤ちゃんは生まれた時は歩く事ができません。
と言うよりも、身体のコントロール自体がまだできません。
ところが、経験と刺激によって段々いろいろな動きを習得していきます。
これらも潜在意識によるものです。

このように私達の身体は本来潜在意識によってコントロールされるようにできています。
ところが、顕在意識がその領域を侵す時があります。
それは頭で考えて、意識で身体をコントロールしようとした時です。
この時、顕在意識が潜在意識の領域を侵している事になります。
この状態で繰り返し、練習をすると脳からの指令と筋肉活動に誤作動が起こり、身体がどのように動いているかが分からなくなります。
これがイップスに陥る一番大きな原因です。

送球イップスの直接的原因

送球イップスになってしまう直接的な原因はメンタルではありません。
もちろん、メンタルが関係しているのは事実です。
その多くはプレッシャーがかかった場面で発症するからです。

ですが、それは直接の原因ではなく、間接的な原因と考えるべきです。
理由はメンタル面だけを改善しても、イップスは改善しないからです。
もっと、直接的な原因があり、その原因を改善しないと送球イップスが治る事はありません。

では、直接的な原因は何か?
それは、ボールをコントロールする感覚をしっかりと身につけていない事です。
例えば、ナイフ投げの達人は人に向かって投げる事ができます。
彼等はどうしてそのような事ができるのでしょう?
万が一でも、ナイフがコントロールできなければ、大変な事になります。
ですが彼らは絶対にコントロールできる感覚を持っています。
そして、「どうすれば、その感覚で投げれるか」が分かっているんですね。
つまり、百発百中にコントロールする為のコツを知っているわけです。

少し極端な例をお話ししましたが、基本的に送球の時にボールをコントロールする感覚も同じ事が言えます。
もし、ボールをコントロールする感覚を知っていたら?
そして、どうしたら、その感覚で投げれるかを知っていたら?
例え、プレッシャーがかかった場面でも、ボールのコントロールが乱れる事はありません。

ところが、その感覚が分からないとどうなるか?
プレッシャーがかかると身体の動きが硬くなり、ボールをコントロールする事ができなくなります。
それがきっかけで脳のイメージと筋肉活動にギャップが生じ、「イップスの症状が出始める」
こんなケースが非常に多いです。

送球イップスの精神的原因

先ほど、お話ししたように送球イップスの直接的原因は精神的な事ではありません。
メンタルや心や、プレッシャーではないと言う事です。
ですが、大きく関係している事は事実です。
では、精神的にはどのような事が原因となっているのか?
その事についてお話ししたいと思います。

送球イップスの始まりはある条件が整った時にのみ現れます。
多いケースは、遠投は問題が無いのに、キャッチボールをすると「全くボールがコントロールできない」
このようなケースです。
イップスの症状が進んでしまうと、「とにかくボールが投げれない・・」と言う事にもなりますが、きっかけは多くの場合、ある条件があります。

この条件の中には「まず、間違いない」と言って良いほど、プレッシャーが関係しています。
つまり、プレッシャーがかかった場面でミスをした事がトラウマのようになり、イップスが出始めるわけです。
逆に言えば、全くプレッシャーがない場面でミスをしても、それは単なるミスで、イップスにならない可能性が高いと言えます。

プレッシャーがかかっている場面でのミスはインパクトが大きく、一度のミスでも強くイメージ化されます。
その為にその時を境に「イップスのイメージが湧いてくる」と言う事が起きます。

ですが、そもそも、プレッシャーがかかった時に、なぜ、ミスをしてしまったか?
もし、プレッシャーがかかった場面で、実力以上の物が出せたとしたら、逆に「ここ一番ではミスしない」と言うイメージを作る事も出来たのです。

では、その時に精神的にはどんな状況だったのか?
多くの場合、プレッシャーがかかると意識は過去、または未来に飛んでしまいます。
つまり、一番大切な「今に集中」する事ができなくなります。
そして、過去、失敗した経験や、これから起こる結果への不安などに意識が囚われがちです。
その為に、多くの場合、ネガティブなイメージが湧いてきます。
これがプレッシャーがかかった場面で精神的に起こりがちな事です。

私達の身体は脳でイメージした事を実現すると言う能力を備えています。
描いたイメージがネガティブな物であろうと、ポジティブな物であろうと関係がありません。
ただ、描いたイメージを実現します。
ですから、ネガティブなイメージが湧いてしまえば、当然、ネガティブな結果を起きます。
その結果が「ここ一番で大きなミスをしてしまった」という事です。
これが送球イップスの精神的原因と言えるでしょう。

送球イップスはフォームに問題があるのか?

一般的には送球イップスの原因はフォームや投げ方にあると考える方は少なくありません。
このように考える方は、イップスを改善しようとすると正しいフォームに矯正しようとします。
ですが、送球イップスの原因はフォームの問題なのでしょうか?
私はそうは思いません。
イップスと送球フォームは全く別の次元の物です。
もし、イップスが送球フォームに問題があるなら、ボールを投げた事がない初心者の人はボールをコントロールできない事になりますし、みんなイップスにならないといけません。
ですが、そんな事はありません。
初心者でボールの投げ方は良くなくても、ボールをコントロール良く投げる事はできます。

また、左手でボールを投げたらどうでしょう?
やはり、投げ方はぎこちなくても、ボールをコントロールする事はできます。
イップスの時のように「全くどこに飛んで行くか分からない」なんて事はありません。

この事からも送球イップスの原因はフォームや投げ方の問題ではない事がわかります。
と言う事はフォームや投げ方を改善する練習をしても、イップスを治す事は難しいと言う事です。
それどころか、フォームや投げ方を矯正すると余計にイップスは酷くなる可能性がありますので、くれぐれも注意してほしいと思います。

送球イップスになりやすい練習

実はイップスになりやすい条件と言う物が存在します。
この条件を満たしてしまうと、誰もがイップスに陥る可能性があります。
では、「その条件とはどういう物か?」
また、「どんな練習をするとイップスになりやすいのか?」についてお話ししたいと思います。

イップスの原因は脳内のイメージと筋肉活動に誤差が生じる事です。
私達の身体は基本的に潜在意識(無意識領域)でコントロールされています。
にも関わらず、頭で身体を動かそうとすると言う事は、潜在意識領域を顕在意識が侵す事になります。
これが筋肉活動に誤差が生じさせる最も大きな原因です。

つまり、イップスになりやすい条件とは「頭で考えて身体を動かそうとする」事であり、また、「頭で考えて身体を動かそうとする練習」はイップスになりやすい練習と言う事になります。

例えば
「正しい肘の使い方に矯正する」
「正しいリリースポイントに矯正する」
「正しい下半身の使い方に矯正する」
「正しく上半身と下半身が連動するように矯正する」
・・・・・

一般的にはこのような練習は特別な事ではなく、ほとんど全ての方がこのような練習をしていると思います。
ですが、実際にはこれらは全て頭で身体を動かそうとしている練習、つまり、潜在意識領域を顕在意識が侵している練習なのです。
その為に、これらの練習はイップスにとてもなりやすい練習であり、いつイップスに陥ってもおかしくはありません。
少し極端に言えば、イップス予備軍とも言えます。

送球イップスになりやすいメンタル

イップスはメンタルが直接原因ではありません。
ですが、関係がないわけではなく、イップスに陥りやすいメンタルがあります。
それは、結果に意識を集中させる考え方や価値観です。
人は結果に意識を向けると、必要以上にプレッシャーを感じ、身体は硬直し、自然に動く事ができなくなります。
この状態でプレーをすると普段の感覚とは全く違う状態でプレーする事になり、とんでもないミスをする事は少なくありません。

ただ、これだけではイップスではなく、ただ、プレッシャーによって、身体が上手く動かなかった大きなミスです。
ですが、このような大きなミスによって、パニックを起こし、普段の自分の感覚を忘れてしまう事があります。
自分の感覚を忘れると言うより、レベルの高いプレーに必要な集中点を忘れると言っても良いかもしれません。
いずれにしても、「普段自分がどうやって投げていたのか?」が分からなくなり、試行錯誤しているうちにイップスに陥ると言う物です。

このようにメンタル的な要因はイップスの直接原因ではありません。
ですが、それがきっかけになる事は少なくありません。

そのきっかけになるのが「結果の良し悪し」を必要以上に意識する考え方や価値観です。
確かにスポーツにおいて、結果を出す事はとても大切な事です。
ですが、結果に集中すると身体はプレッシャーから上手く動かなくなります。
逆に言えば、プレッシャーを感じやすい考え方や価値観はイップスに陥りやすいメンタルとも言えるわけです。

送球イップスの治し方

では、「どうすれば、送球イップスを治す事ができるか?」
その治し方ですが、最も大切な事はボールをコントロールする感覚を磨く事です。

そもそも、送球イップスに陥ってしまったのはボールをコントロールする感覚を磨かず、投げ方や身体の使い方を練習する、または無理にボールをコントロールしようとした結果です。
その結果、脳(イメージ)と身体の関係にギャップが生じてしまったのです。
ですから、このギャップを埋めてやる事が送球イップスを治すには最も大切な事になります。

本来、私達の身体は五感によってコントロールされる物です。(第六感も関係していると言う方もおられます)
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚で感じた事を元に身体は動くわけです。
ですから、コントロールよく送球をする為にもベースには五感によるコントロールが当然、必要になります。
にも、関わらず、投げ方や身体の使い方ばかりを意識したり、練習したりすると、身体は誤作動を起こしてしまいます。

例えば、料理をする時には当然、味見をしますよね。
味覚によって、感じた味に対して、調味料などを調整する事で好みの味に整えていくわけです。
大切な事は舌で感じた味であり、調味料を入れる時の姿、形ではありません。

送球する時のボールコントロールにも同じ事が言えます。
最も大切な事はボールの重さを感じる事であったり、指先で触れる感触であったり、または、指からボールが離れる時の感触だったりするわけです。
また、目標までの距離や投げるボールの軌跡のイメージだったりします。

料理の場合は味覚で感じる味が最も大切な要素になりますが、送球の場合は触覚によって感じるボールの感触と目標のイメージが最も大切な要素になります。
この感覚が磨かれて、初めて、投げ方や身体の使い方が必要になります。
不幸にもイップスになってしまった方はこの優先順位を間違ってしまったわけです。

ですが、安心してください。
全く、悲観する事はありません。

正しい投げ方や身体の使い方を練習するのを一旦お休みして、その代わりに五感を使い、ボールをコントロールする感覚を磨く練習だけを徹底すれば良いのです。
そうすれば、投げ方や身体の使い方とコントロールする感覚とのバランスが取れてきます。
その時が来れば、イップスは嘘のように全く出なくなります。

闇雲に練習しない

イップスはイメージと直結しています。
マイナスのイメージを持つとそのイメージ通りの事が起こります。
また、そのような経験を繰り返すとそのイメージと経験が強く刷り込まれる事になります。
その為に、イップスは焦って、闇雲に練習するとかえって酷くなる傾向があります。
また、イップスのイメージが強く刷り込まれると言う事は治るまでの時間もかかる事になります。
私の経験上、イップスを発症してから、数多く練習した人ほど、治るまでに時間がかかります。
逆に、練習量が少ない方が早く治ります。
「とにかく、早く治したい」
こんな焦りから、練習量を増やしてしまう気持ちは分かります。
ですが、闇雲に練習する事はかえってイップスの症状を酷くします。
一日でも早く治す為には、焦らず、適切な対策をする事が大切です。

利き手と反対側で投げてみる

送球イップスになってしまうと、どんな投げ方が自然な身体の使い方なのかが、わからなくなります。
そこでおすすめなのが、利き手とは反対側の腕で投げる事です。
もちろん、ボールの上手くコントロールする事はできないかもしれませんし、また、投げ方もぎこちなく、良いフォームではないと思います。
ですが、それが目的ではありません。
頭で意識して身体を使うのではなく「ただ、身体に任せて動かす」感覚を体験する事が目的です。
動き自体はスムーズではなく、また、ボールのコントロールもままならないでしょう。
ですが、利き腕とは全く違う感覚を感じるはずです。
この感覚は頭(顕在意識)で身体を動かしているのではなく、身体(潜在意識)に任せて動かしている感覚です。
送球イップスを治す為にはこの感覚を利き腕に取り戻す必要があります。

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