Fさんのプロフィールとイップスの症状
今回は先週、愛知県からイップス克服レッスンの受講にいらしたFさんのレッスンについてお話したいと思います。
イップスでお悩みの方は参考にしてみてください。
Fさんは現在34歳の男性です。
テニスは小学生から始め、テニス歴は約23年
以前はコーチレベルと言われるほどフォアハンドが上手だったそうです。
ところが、今から約3年前、2015年あたりからフォアハンドイップスに陥ってしまいました。
Fさんの場合、球出しのグリップをセミウエスタンからボレーのグリップに変えた事がきっかけだったようです。
「インパクトの前に違和感が出てきて、自分の意思に反して腕が勝手に動く」
「腕に力が入らない」
「コントロールがままならず、どこにボールが飛ぶか分からなくなる」
「壁打ちで短い距離で打つと感覚がおかしくなる事が多い」
こんな状況だと説明をしてくれました。
イップス克服レッスン 1回目の終了後の感想
こちらが一回目のレッスン終了後、ご自身で練習をされた時の感想です。
「今日は昼から3時間ほどテニスをしました。ラリー練習する前にウォームアップとしてボールキャッチをしてボレーボレーでボールの回転を観るようにしてから練習をはじめました。
最初のフィーリングとしては前と同じかな、と思っていたのですが、ラリーを続けていくと以前よりラリーが続きボールの質もよくなっているように感じました。
まだ、自分のイメージとは違うミスも何度かありますが、上手く打てたボール以外も観るように気をつけているとそれほどストレスではなくなってきました。
良かった点:インパクトの時の気持ちよさが7,8点の時が何度か続きました。
途中、ボールコントロールが乱れる人とラリーをしたときボールが大きくアウトしたり、軌道が高くなったりしましたが、呼吸に意識を向けることでこちらのショットは安定してきました。
ラリー中のチャンスボールを強く打ってもアウトせずに威力のあるボールが飛んでいったことが、2,3度ありました。
変化:イップスの症状が出始めてからのインパクト時の違和感はかなり軽減されてきました。
ボールコントロールもまだ、軌道が高くなってしまう傾向がありますが、イップスが出る前の6,7割くらいに戻ってきました。
戸村様の自信をもって、思い切って、というアドバイスからミスがあっても少し思い切れるようになってきました。
周りの人からはまだ、バックの方がいいと言われます。戸村様と打ったときはバックは本調子ではなかったのもありますが。
ただ、フォアもすっぽ抜けがほとんどなくなったと言われました。」
このように1回のレッスンでかなり状態は改善されたようです。
Fさんのイップス克服レッスンの内容
さて、それでは、Fさんにはどんなレッスンを受けていただいたか?
その内容を簡単にご紹介します。
今回のレッスン時間は2時間です。
前半は手出しやラケット出しによるボールへの集中の仕方や集中力の高め方の指導がメインです。
そして、集中状態に入った状態で的へボールをコントロールする練習をします。
後半は同じくボールへの集中力を高めた状態でラリー練習をします。
いずれの練習もボールへの集中力を高め、脳と身体の結び付きを良くして反応を高めていきます。
後は繰り返して、その状態を条件反射化します。
これでイップスは自然に消えてなくなっていきます。
レッスン前のミーティング
まず、レッスン前に1時間のミーティングを行いました。
このミーティングでイップスに陥ってしまった原因や人間の脳と身体の結び付き、テニスが上達する為に必要な条件、そして、「今後どのようにイップスを改善していくのか?」そのメカニズムと具体的な方法についてお話しします。
このミーティングは非常に大切で、この時に今まで勘違いしていた事や間違ったイメージをリセットします。
このミーティングで正しい理解が深まれば、イップス克服レッスンは1/3はクリアしたと言っても良いほどです。
イップスに陥ってしまう方は脳と身体のメカニズムについて大きな勘違いをしています。
その為に、頑張って練習すればするほど、身体は自分の意思に反して動くようになってしまうのです。
この勘違いに気付いていただく為のミーティングです。
オンコートでの集中体験
ミーティングが終わったら次にコートに行って、まずはラケットを持たず、ボールを使った集中体験をしていただきました。
私達の身体はイメージを明確にし、ボールに集中すると自動的に動くように出来ています。
身体を動かす事を頭で意識する必要は無いのです。
この事をここで体験していただきます。
脳と身体のメカニズムについて、頭でいくら理解してもイップスが改善される事はありませんし、テニスのパフォーマンスが改善される事はありません。
大切な事は実際にイップスが解消され、気持ち良くボールが打てるようになる事です。
その為には、頭でいくら理解してもダメなのです。
ご自身の身体がその体験を実際にする事が必要になります。
そこで効果的なのがラケットを持たないでシンプルな動きで自分の身体が自動的に動く事を体験する事なのです。
この体験をする事で、「なるほど!確かに自分の身体は自動的に動いてくれる!」と気づく事が必要なのです。
ちなみにこの体験が成功すれば、イップス克服の2/3は成功したも同然です。
ボールへの集中力を上げてターゲット練習
次にイメージを明確にし、的にボールをコントロールするターゲット練習を行います。
この大切な事は正しいイメージを明確にする事です。
イップスに陥る方は自分では正しいイメージを湧かせているつもりでも、実は勘違いしたイメージを持っています。
その為に、私が誘導し、正しいイメージに修正します。
ちなみに、この作業についてよく質問をいただきますが、残念ながらイップスに陥っている方、本人ではできません。
勘違いを自分で見つける事が非常に難しいのと同じで、私が活字でどれほど説明しても、正しく伝わる事はできません。
ですので私と一緒に行ってもらうほかありません。
正しいイメージを湧かしてもらったら、ボールをコントロールする為の感覚をもう一度構築していきます。
イップスに陥った状態は脳内で描いているイメージと身体の結び付きに誤作動が起こった状態の回路を持っています。
その為に、その回路とは別の回路をもう一度作り始めるわけです。
これはそれほど、難しい作業ではありません。
ボールへの集中力が高まっていれば、すぐにボールをコントロールする感覚を身につける事ができます。
ただ、Fさんの場合、呼吸にも少し問題があったので、そこも改善しました。
すると、動きがよりスムーズになり、すぐにボールの安定度が増しました。
ご本人のフィーリングも最初が10点満点中、3,4点だったものが、7点から8点になり、最終的には8,9点が安定して出るようになりました。
ラリー練習
最後にラリー練習をします。
球出し練習だけでは、相手ボールの変化に対応する事ができないので、ラリーをする事で、距離や高さ、回転などの変化のあるボールに対しての対応力を身につけていきます。
今回のFさんの場合、基本的には先ほどのターゲット練習でイップスはほぼ克服されていましたので、ラリー練習ではほとんど問題はありませんでした。
とにかく、落ち着いてボールに集中する。
そして、「感じるままにボールを打つ」
後はこれだけです。
イップスではない回路を数多く使い、条件反射化する事がここでの練習の狙いです。
ボールのコントロールや結果を気にせず、ただ、ボールに集中し、楽しくラリーを続けます。
時間にして、約30分~40分
ひたすら淡々とラリーします。
すると不思議な事にどんどんボールのコントロールが良くなるだけではなく、ボールの勢いや威力も増してきます。
これはイメージと身体の結び付きが良くなってきている証拠です。
イップスに陥っている時は身体の動きは硬くてスムーズに動く事ができません。
そして、素早く動けず、反応が遅いです。
ですが、ボールへの集中力が高まり、イメージと身体の結び付きが良くなると身体は自然と素早く正確に動くようになっていきます。
こうなれば、後は数と時間の問題です。
繰り返すだけで、条件反射として身について行きます。
以上が今回のFさんのイップス克服レッスンの概要です。
イップスでお悩みの方は参考にしてみてくださいね。
イップス克服レッスンを終了して
2回目のFさんのレッスンが終了しました。
2回のレッスンでほぼイップスは出なくなりました。
ご本人から感想をいただきましたのでご紹介します。
「イップス克服レッスンありがとうございました!
お陰さまでイップスはほぼ克服できたと思います。
技術力向上のレッスンで、今まででは感じたことのないいい当たりが出たときや飛んでいくボールが見え始めたのは新鮮で楽しかったです。
まだ、調子の波や課題はたくさんありますが、結果や調子を気にせず楽しんでテニスをやっていきたいです。
また、何かありましたらご連絡させて頂くと思いますが、そのときはよろしくお願いいたします。」
このようにご本人もイップスを克服できたと感じているようです。
自分自身でこのように思える事はとても大切な事です。
いくら、症状が出なくても、心のどこかで「また出るかも」と心配しているうちはイップスを克服したとは言えませんからね。
イップスは誰もが陥る可能性がある物です。
病気でも心の問題でもありません。
正しい対処をすれば、必ず、自然と出なくなります。
ただ、イップスの状態を長く経験すると、それが癖になり、改善するのに時間がかかります。
「イップスかな??」
「身体が自分の意に反して動くいてしまう・・」
「突然、ボールがコントロールできなくなってしまった・・」
もし、こんな事を感じる事があれば、無理に頑張らないで、できるだけ早く正しい対策を実践する事が早くイップスを抜け出す一番の秘訣です。
本日のお話は以上です。
いつも長文お読みいただいて本当にありがとうございます。
追記 その後の感想をいただきました
昨日今日と、かなりテニスの調子は良く、段々テニスが楽しめるようになってきました。
(でもテニスの調子が悪くても楽しむのも大事ですよね。)
フォアハンドは大体、7,8割くらい戻ってきました。
まだ、イップスの残り火みたいなのはたまに出ますが、あまり気にならなくなってきました。
ほぼ気持ちよく打てる昔の感覚が戻ってきた感じがしています。
本当にこれは戸村さんのイップス克服レッスンのおかげだと思います。
本当に感謝しております!
また、ラケットの試打を試していたところ、ボレーの感覚もかなり良くなって、自由自在に打てるようになってきました。
フォアボレーの違和感もほぼ出なくなってきました。
リターンも良くなってきました。
最近はやはり何も考えないで打つというのが非常に大事だと実感しております。
その結果ボールへ意識が向いて、段々楽しめるようにもなって来る感じがします。
まだまだ、ボールへの集中力は低いので、もう少し上げられたらと思っていますが、無理に上げようとせず、淡々と何も考えないで楽しむことを実践しようと思います。
まだ、サーブやスマッシュのときに手首が少し痛むので、接骨院に通って治療してもらっています。
以前戸村さんが頂いたアドバイスも参考にしながら、リハビリに励んでおります。
手首の痛みを気にせずサーブスマッシュができるようになれば、ゲームをやっているサークルにもまた、参加しようかと思ってます。
ただ、最近は、自分のテニスが少し上手くなってきたからか、ラリーの相手に求めるレベルが上がってきてしまい、もっと上手い人と打ちたいとか、相手がもっと上手くなって欲しいと思うようになってきました。
そうすると、相手に集中してしまい、ボールへ集中できなくなるので、すこしモチベーションが下がる時間帯があります。
そういうときは、あまり相手に期待せず、ただ、淡々と来たボールを返していると、落ち着いてきます。
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